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ため、駅からおんぶしたときもしばしばでした。
右も左もわからない、また自分の名前すら書けない子供を我が子のように可愛がり、頬を擦り寄せて発音を練習する、あのすばらしい教育指導の姿を拝見したとき、こんなに優しい先生方と勉強できる子供たちは、本当に幸せだと感謝しました。そして学校では仲間がたくさいることを知り一安心しました。
ある夏休みに、村では子供たちは七夕祭りなので公民館で歌や踊りを見せる催しがありました。お祖母さんは初子と弟たちを連れて行きました。そして、帰ったとたんに大きな声で泣き出したのです。私は、「どうしたの…」と聞いても泣き止みません。「ああ、そうか、皆と自分も踊れないので悔しかったのか」。私も子供を強く抱き締めて二人で泣きました。そのことを思い出すと今でも胸が痛みます。
その悔しさが努力するきっかけとなったのだろうか。顔も生き生きとして勉強もできて、言葉もはっきりと、「お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさん」や、弟たちの名前、家族全員の名前を呼べるようになりました。あの感動は忘れることはできません。
秋がきて寒くなるので寄宿舎に入れてもらいました。初めての親離れなので心配でしたが、寮母さんたちはみな親切で、それどころか、家ではなかなか躾られない整理整頓も上手にでき、何事が起きてもすぐ着られるように、たたんだ衣服を枕許に置いて寝るのです。
一年生も終わり二年生の学芸会のとき、黒田節の踊りを、流れる曲に少しも狂わず踊り、見ていたお母さん方は、「耳が聞こえるのだろうか」と大変びっくりしました。私も、「どうや

 

 

 

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